きめこまやかな観察

中川知博

2023年11月06日 08:00



 言葉というのは、コミュニケーションの上で、重要な役割をはたしているのは、いうまでもありません。けれども人間のコミュニケーションは、相手の表情、視線、動作、姿勢など言葉以外のものも含まれ、そういうものから、相手をうかがい知ることもできます。

 ある洋菓子店を営んでいるお母さんは、次のようなことを語っています。 「店が忙しく、子供とのふれあいの時間が十分に持てない私は、子供が帰宅したときに、店の中を通過する、ほんの少しの間、子供の表情や歩き方、声の調子の変化を見逃さずに、注意しています。そこで『どこか、何かヘンだ。いつもと違う』と感じたときは、仕事の合間をぬって、後でじっくり子供と対話するようにしています」

 このきめこまやかな観察眼は、母親ならのものです。まだ大人と違って、不安定な心理状態が続く子供に対しては、言葉以外の何かをつかむ意味は大きいのです。

 よく、忙しすぎる両親なのに、子供がすばらしく成長している話を聞きますが、忙しさの中でも、子供に目をかけることを忘れてはいけないことを物語っています。

 教育の源泉は、決して放任ではなく、目をかけ、心をかけることなのです。