2018年05月21日

親に心を向ける


 作家の出久根達郎さんは、古本屋を経営しながら作家を志した人です。

直木賞を受賞したとき、本人は古本屋をやめて、執筆ひとすじの道を歩みたい

と考えていました。


 ところが、お母さんは、受賞を喜ぶよりも、物書きの仕事に進むことに不安を

感じていました。そんなお母さんの心を察した出久根さんは、その後も古本屋を

続けて、地道に動いていることを形として残すことにより、安心してもらうように

努めました。


 こういうことが、親に心を向けることではないでしょうか。


 お母さんが、89歳で亡くなったとき、後片付けをしていた出久根さんは、

「タカラハコ」(宝箱の意味)と書かれた菓子箱を見つけました。


 なかには、30数年前、中学を卒業して東京で就職した出久根さんが、

お母さんにあてた手紙の束が入っていました。


 「あらためて読んでみると、読み書きのできない母親であることを知って

いながら、自分に返事をくれないことを責めているんですね。

母は、つらかったろうに、宝物として大切にしまっていてくれた

と思うと、深い母の愛を感じ、涙があふれました。」


出久根さんは語っています。


 親子の絆が薄れつつある今、心に残る話ではないでしょうか。
  


Posted by 中川知博 at 08:00Comments(0)

2018年05月07日

自分に必要なくても

 ある日、目の不自由なNさんが友人を訪ねて話し込んで夜になりました。

帰り際に、「夜道は危ないから」と、友人は懐中電灯を手渡しました。


 ところが、Nさんは、笑って「私は目が見えないのだから、そんなもの

必要ありません」と答えました。


 するとその友人は、「あなた必要なくても、先方から歩いてくる人が助かるのでは・・・」

と言ったのです。Nさんは、「それはそうだ」と納得したそうです。


 このように、私たちの日々の暮らしのなかで、たとえ、自分には必要なくても、

相手のために必要なものがあることを、忘れがちです。


 たとえば、病気になったときの笑顔も、そのひとつでしょう。

つらい思いをしているのだから、とても微笑むような状態ではないけれど、

看護してくれる家族や、お見舞いに来てくれる人たちには、

笑顔は必要だといえるでしょう。


 身だしなみも同様のことが言えます。さわやかで、すがすがしい服装は、

周りの人たちへのおもいやりです。


 自分だけのことを考えていると、”自分には必要ない” と答えてしまうことになります。  


Posted by 中川知博 at 08:00Comments(0)